先の方法により無限次のSymplectic Integratorが構築されるのですが 同じ次数のSymplectic Integratorによる計算でも、エネルギーの振動を より押えた安定なSymplectic Integratorを構築することができます。
(31)式での
変形の仕方にはいろいろあるのですが、例えば(35)式を複雑化して
と再帰定義する分解方法があります。この方法の明瞭な利点はさらに別な形式の変形として鈴木先生が推奨されている次の分割を 紹介します。
これもSymmetric Decompsitionです。1次あげることで指数の項の数が 約5倍になるので計算量が著しく多くなるのが困りますが、数値積分の 精度が遥かにあがります。下図に(36)式型と(37)式型の分解によるSymmetric数値積分の結果を 載せます。Hamitonianなどの系の条件は (00)式で例示したものと同じです。
3項分解型3次Symplectic法:計算にかかった時間は 130秒です。
5項分解型3次Symplectic法:計算にかかった時間は 180秒です。
振動の振幅が3項型のものよりさらに20分の1になっています。
Symmetric Decompsitionのうち奇数次の分解
(38)式の
(38)式を見直せば、
これにより(37)式のタイプの分解法は次のように拡張されます。
このタイプの分解法では(40)式で示される各次数の指数積展開での各項の展開係数をコンピュータで計算します。
Symplectic Integratorでのこの展開係数の意味は、短い時間ステップ
Δtうちの各係数の分を作用素
各係数の指数ひとつを作用する作業を1stepとして、
各stepで時間がどのように進んでいくかを以下の図に示します。
次数があがるとこのように折れ線グラフがより複雑になります。 その複雑さの入り組み方はまさにfractal的です。 高次分解が低次分解を再帰的に組みあわせていることからも その構造がfractalになることは察しがつきます。
このような性質からこの指数作用素の分解はfractal decomposition と命名されました。