第5章 影のHamiltonian


Symplectic法の作り方と使い方はわかりましたが、この方法が なぜそれほど注目されているかがまるでわかりません。Symplectic Integratorの最大の特徴のエネルギー保存について解説します。

作用素を無限積で表示して、それを有限積で近似しました。このときの 近似で数値積分に誤差が起こります。しかし、その誤差の振る舞に、 とてつもない性質があるのです。

指数関数の有限積は、一つの指数関数に必ずまとめらることが 知られています。すなわち、

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この D' はもちろん D とは違います。その違いは、 u_i,k_i を求めるときに無視した Δt^nのオーダーです。 さらにこのD' に対して、これを生成するハミルトニアンH' が存在します。
有限積による積分では、この影のハミルトニアン H' の系での 粒子の運動を完全に予測するものなのです。エネルギーもこの系では厳密に 保存されます。
H'H との差は Δt^n のオーダーなので、 H'から解かれた(p,q)Hの値を求めると、 振動はするものの、その振幅はΔt^nのオーダーであって 決してエネルギーの単調増大減少は起こり得ないのです。

これがSymplectic数値積分法がエネルギーを保存する原理です。 近似度を高めることは、エネルギーの振動の振幅を小さくするためなのです。


  • 第6章 指数作用素のフラクタル分割(前編)
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    Copyright(C) by Naoki Watanabe. Oct 21st, 1995.
    渡辺尚貴 naoki@cms.phys.s.u-tokyo.ac.jp