物理学の分野には大きく分けて三つの分野があります。理論物理学、 実験物理学、そして計算物理学です。計算物理学は近年のコンピュータの 性能の大躍進によって活発になっている物理の新しい分野です。
コンピュータはその猛烈な計算力により複雑な微分方程式や偏微分方程式 をも数値的に解いてくれます。そのため、紙と鉛筆ではどんなに努力 して式を変形しても解けなかった現象についても具体的に解析を行える ようになりました。カオスやフラクタルの分野がこの顕著な例です。
またコンピュータは実際にはありえない世界をもその中に作りあげることが できます。実験室では達成できないような極限の環境での実験も コンピュータの内部でたやすく実現されるのです。物性研究や流体工学 などでよく行われています。
コンピュータはあちこちに普及してきました。さまざまなソフトが 広まっているので、コンピュータは万能であり、その言うことはすべて 正しいと思う人もいるくらいです。また、人間がコンピュータに支配されて しまうと危惧する人すらいます。
コンピュータは人間の産物です。ソフトも人間が苦労して作り上げた産物 です。それゆえ、できることには限界があり、また間違いもおかします。 コンピュータに意志はなく、ただ与えれた計算を猛烈な速度で計算するのみ です。人間がコンピュータを利用するのであって、コンピュータが人間を 利用するのではありません。
コンピュータ社会となった現在において、私たちはコンピュータについての 理解を深めなくてはなりません。それは既存のソフトの利用の仕方を知る だけではなく、根本的なコンピュータの原理を知って、コンピュータを 自在に操る技術を身につけることです。すなわちコンピュータ プログラミンングの技術を身につけることなのです。
本書はそのプログラミングの技術を初心者でも容易に身につけられる ように解説する書です。また併せて物理・工学の分野で必要になる プログラムの特殊な利用方法についても解説します。
本書が皆様のプログラミング学習の手助けになれれば著者として 幸いです。
渡辺 尚貴